子牛の胃と哺乳②

 前回は、子牛の胃にはミルクを第一胃に入れない様な仕組みがあるという話をしたが、子牛の胃はどのようにして発達するのかということについて書いてみる。

 下の図は牛の胃の発達過程の図であり、生後1週間の子牛の第一胃は胃の24%しかないのに比べて、3カ月齢では60%を占めるまでに成長し、最終的には胃の80%を占めるまでになる。


酪農ヘルパー協会・中央畜産会「新しい酪農技術の基礎と実際」より

 生後1週齢の子牛の胃は、イヌやネコのような単胃動物(胃が一つの動物)と同じ様な構造をしている。ミルクが食道から流れてくると、第二胃溝がミルクの道筋をつくり、消化を担当する第四胃へと流れる。しかし、いつまでもこのままだと牧草を消化できず、離乳できない。

 そこで子牛は草を発酵させる第一胃の細菌を増やしながら、第一胃を大きくしていく。そのためには、固形飼料が必要となる。スターターや乾草などの固形飼料である。

 スターターは子牛用の濃厚飼料主体の固形配合飼料であり、第一胃に物理的刺激を与えて絨毛の発達を促すとともに、第一胃で発酵することで、VFA(揮発性脂肪酸)というガスを発生する。第一胃はVFAを吸収して体内で利用し、エネルギーにすることができる。子牛の第一胃は未熟だが、一定数飼料を発酵する細菌や細菌を食べるバクテリアは存在し、VFAの刺激により絨毛も発達していく。ちなみにスターターの方が乾草よりも第一胃の発達が良いといわれている。

 第一胃が発達していくと、ミルクなどの液状飼料から乾草や配合飼料などの固形飼料へと主食がかわっていく。現在人工哺乳をしている農場では、およそ6〜8週齢で早期離乳していることが多い。牛本来の離乳時期は約6ヶ月齢といわれているが、早期に離乳した方がミルク代の節約や哺乳する手間、第一胃の成長促進など都合の良いことが多いからである。

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