子牛下痢症時の内服薬(経口補液剤)

子牛が下痢をした際に、農家さんができる手当として、経口補液剤の投与がある。

主な医薬品の経口補液剤の種類と特徴を下にまとめた。

 経口補液剤は、簡単に言うと食塩とブドウ糖の量を調整して水に溶かしたもの。経口補液剤を飲むことで小腸において水分の吸収が行われるため、下痢、嘔吐、発熱などによる脱水症状を改善する目的で用いられる。

 経口補液剤のメリットは、

 ①点滴による輸液よりも安全であること

 ②補液剤を滅菌しなくて良いこと

 ③農家さんによる早期投与が可能であること

 現場で大きなメリットが③である。下痢になった子牛を全て診療にかけていると診療に立ち会う農家さんも獣医師も疲弊してしまうだろう。

 次に、経口補液剤に含まれる成分の役割を見てみよう。

 ①細胞外液を増やすために塩分(ナトリウム)を含み、電解質のバランスを保つ

      塩化ナトリウム、塩化カリウム

 ②アシデミア(脱水によって血液のPHが下がった状態)の補正を行う

      酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム

 ③エネルギーやアミノ酸を補給する

      ブドウ糖、グリシン

 ③については、ミルクに含まれるエネルギーよりも少ないため、経口補液剤のみ与え続けてもエネルギー不足になってしまう。また、経口補液剤のみを与え続けるとナトリウム過多になってしまい、調子を崩すこともあるので、自由飲水できるようにしておくことも重要である。

⚠️重炭酸の含まれる経口補液剤は、四胃内のカード形成を妨げ、ミルクの消化効率が落ちるため、ミルクと時間を空けて飲ませた方が良いと言われている。

 では、経口補液剤の適応症例はどんな場合なのか見てみよう。

 ①下痢の初期

 ②ふらついていない場合

 ③吸乳反射がある場合

 ④子牛の口の中が冷たくない場合

 

 逆に獣医師に診療を依頼する目安としては、

 ①下痢が1週間以上治らない

 ②下痢してふらついてる、立てない

 ③下痢してミルクを飲まない(吸乳反射がない)

 ④下痢して鼻が乾燥していたり、鼻や耳、肢の蹄の上あたり、口の中が冷たい場合

 特に②、③は放置しておくと翌日には重篤化していることが多い。また口の中が冷たい場合はアシドーシスが重篤化している可能性があるので、すぐに獣医に診療依頼した方が良い。

 手軽に飲ませられる経口補液剤は、下痢症の場合に手軽に利用できる素晴らしい商品だと思う。用量と用法、タイミングを守れば、下痢症の初期には有効な手段である。

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