DCADとPTHの関係

DCAD(Dietary Cation-Anion Difference:飼料カチオン・アニオン差)とPTH(Parathyroid Hormone:副甲状腺ホルモン)は、乳熱の発症に関わってくると言われており、乾乳期に意識すべき項目。

DCAD(飼料カチオン・アニオン差)

 DCADとは、飼料中のカチオン(陽イオン)とアニオン(陰イオン)の差を示す指標。主にナトリウム(Na⁺)、カリウム(K⁺)、塩化物イオン(Cl⁻)、および硫酸塩イオン(SO₄²⁻)の含有量を基に計算される。   

計算式は以下の通り:

  DCAD=(Na++K+)−(Cl+SO42−)

DCADは家畜の体内の酸塩基平衡に影響を与える。高DCADの飼料は体内をアルカリ性、低DCADの飼料は体内を酸性に傾けると言われている

PTH(副甲状腺ホルモン)

 PTHは副甲状腺から分泌されるホルモンで、血液中のカルシウム(Ca²⁺)濃度の調節に重要な役割を果たす。PTHは骨からのカルシウムの放出腸からのカルシウム吸収の促進腎臓でのカルシウム再吸収の増加を通じて、血中カルシウム濃度を上昇させる。 

DCADとPTHの関係

○乾乳期中、低DCAD飼料の場合

 低DCAD(酸性の飼料)は血液中のpHを低下させるため、カルシウムの再吸収を促進し、PTHの活性を高める効果がある。これにより、骨からのカルシウム放出が増加し、腸からのカルシウム吸収も促進する。その結果、分娩時のカルシウム要求に応えるために、血中カルシウム濃度を維持することが可能となり、乳熱の発症リスクを低減する。

○乾乳期中、高DCAD飼料の場合

 高DCAD(アルカリ性の飼料)は血液中のpHを上昇させ、PTHの効果を抑制する。これにより、カルシウムの骨からの放出が減少し、乳熱のリスクが高まる。

 乾乳期に飼料に陰イオン製剤を添加することで、DCADを下げることができるが、嗜好性が悪いため、乾乳牛の飼料中のDCADを下げることが重要となってくる。粗飼料のK+濃度が高くなりすぎないよう、またCL濃度が高くなるように心がける必要がある。堆肥化が不完全な肥料の施肥を避け、塩素を肥料に添加することでDCADを下げることが可能となるが、自給粗飼料は給与前に飼料分析を行い、乾乳牛については乾物中のカリウム濃度(<2.0%)とテタニー比(<2.2)が下がっていることを確認する必要がある。

 飼料のDCADの調整は、PTHの効果を最大化し、分娩時のカルシウムバランスを維持するために重要となる。これにより、乳熱の予防が可能となり、乳牛の健康と分娩後の生産性を向上させることができる。

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