乳検のデータ等をみているとMUNという値が必ず出てくる。農家さんから、MUNについて聞かれたので、自分の中でわかり易く噛み砕いてみた。
MUNは、Milk Urea Nitrogenの略称であり、直訳すると乳中尿素態窒素のことである。乳汁中の尿素のことで、乳検データや旬報に載ってくる値である。MUNが牛の体の中でどの様に作られているのか、簡単に下の図にまとめてみた。
まず、牛の摂取した飼料がルーメンに入ると、分解性タンパク質が分解され、アンモニアが出る。アンモニアはルーメン内の微生物タンパクを作るのに重要な素材であるが、消費されなかったアンモニアは血中に放出され、肝臓で尿素に解毒されると、体内循環して最後は腎臓で濃縮されて尿中、血中および乳中に排泄される。このとき、飼料中のエネルギーが少なく、ルーメン発酵が少ないとアンモニアがたくさん余ってしまう。すると、乳中のMUNの値が増えてくる。
MUNが増加しているということは、多くのアンモニアがルーメン微生物に利用されていないということになる。つまりMUNは、飼料中蛋白質の利用効率の指標となる。正常値は、7〜20mg/dLといわれている。
ちなみにBUN(Blood Urea Nitrogen:血中尿素態窒素)との違いは、BUNは血中の数値なので採食前後でも大きく数値が異なるのに対して、MUNは搾乳するまで乳房内に留まっていた乳の数値なので、採食前後でも大きく数値が変わらないことである。
○MUNが高い原因
①ルーメンの発酵エネルギーが足りない(炭水化物の発酵が少ない)
②粗タンパク質や分解性タンパク質の給与量が多すぎる
①の対策として、配合飼料と乾燥を混ぜたTMR給与により、ルーメン発酵を持続的にすること。また、分離給与であれば濃厚飼料を多回給与することにより、ルーメン発酵が持続的になるといわれている。また、デンプンの給与を増やすことで、発酵エネルギーを増やすことも重要である。
○MUNが低い場合
①粗タンパク質や分解性タンパク質の給与量が不足
乳タンパク質率が低くなければ、MUNが低いことはむしろ歓迎すべきことである。飼料中タンパク質および飼料中のエネルギーが不足している場合、タンパク質や飼料中のエネルギーを増給することで、泌乳量が増加する可能性がある。
まとめ
MUNの素材はルーメン内で利用されなかったアンモニア(飼料中タンパク質の分解産物)なので、数値からどれだけのアンモニアが無駄になったかの指標となる。つまりMUNは、飼料中蛋白質の利用効率の指標となる。
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